雲丹と鮑のうしおじる

好きなポケモンはガブリアス

「おまえがいないと生きていけないよ、俺は」で雛菊を呪え

2024/4/13 池袋駅にて

 

 

泡沫のユークロニアの淡雪√感想をここから1万字書きます。

カプ萌え大勝利はキメられなかったけど、淡雪という男に出会えてバンザーイ!の感情はある。

 

淡雪・依√ネタバレあり

 

従者・淡雪。
想像以上に、ずっと俺をそばに置いてくれないとやだ……………の26歳だったことに驚いた。私が18歳の頃思い描いた『26歳』はこんな風ではなかった気がする。26歳の男が、俺の大事な姫なのに他の男にとられるのやだ………………してたことが√終盤の答え合わせで明らかになる。

淡雪は26歳にしては幼い。私情を挟みすぎる。
主人に「おまえがいないと生きていけないよ、俺は」を日常的に言える男の精神が26歳に追いついてるわけがなかった。21歳だったらカワイ〜♡で見れることも、26歳だと「これでいいのだろうか?」が沸きあがる。

 

共通終盤〜淡雪√の大まかな流れ

①凍玻璃で人体発火事件が起こる
②雛菊一行が依に絡まれる
③依から雛菊へ縁談話
④雛菊一行が事件を追う
⑤淡雪が事件に関与しているのではないかと依に疑われる
⑥雛菊一行、淡雪の疑惑晴らしと犯人探しを並行
⑦犯人も犯人をそそのかしてた黒幕も捕まえて依とは破談

 

淡雪√のメインストーリーはそんなに面白くなかった。犯人探し学級会はダルかったし、犯人を捕まえて馴れ合って始まったぬるいノリは飛ばしたかった。しかし、メインストーリーに気を取られず淡雪と雛菊に集中できて、私にとってはよかった。私は恋愛する男女見たさに乙女ゲーをやってるから、メインストーリーがどんな仕上がりであっても構わない。男女が私好みの恋愛をしてくれることだけに興味がある。


その恋愛の方はどうかというと、王道の中の王道だった。身分違いの禁断の恋。恋心を自覚した姫がアプローチするも、従者は鋼の心で突っぱねる。大事な姫を取り巻く環境の変化と、止まらない彼女からの愛情表現の果てに従者の本音大暴走。
正直恋愛過程は可もなく不可もなく、スタート時点から関係性は完成されててドラマチックな起伏がなかった。日常の中で彼らが恋心をどう自覚するか、淡雪が自分の気持ちをどう受け入れるかの物語でしかなかったからだ。 それはスタッフコラムから想定できてたことだから不満はない。王道を王道のまま尖らせるなんて芸当、相当難しいことだろう。

 

ただ、淡雪はありきたり従者なんかでは終わらなかった。
恋愛過程より、終盤に淡雪が明かした雛菊との出会いが私にとっては劇薬だった。その劇薬で露わになった淡雪のパーソナリティが本当に強烈だった。
王道のはずが、研ぎすぎて抜群の切れ味に。

 

淡雪が自分の生きる意味ほしさに幼女を育て、成人しても「大人になんてなるな」とおさえつける男だったんだからね

 

淡雪(26)。大事な姫が俺以外の男を拾ってきたことに不満そうな顔をしつつもなんだかんだでお人よし精神を殺しきれず、姫に褒めてもらいたくて結局は世話を焼く忠犬かと思いきや、違った。苦労人はお人よしというイメージがそもそもの間違い。犬というよりメス猫かもしれない。俺以外の男を拾ってくるな……。
雛菊(18)。『東五』という名家の当主なのに天真爛漫でお転婆。世界の綺麗なものばかりを信じられる子。淡雪にのびのびと育てられたであろうことがたやすく想像できる。

 


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発売前情報から淡雪に期待されてたのは雛菊への執心の出処、2人の過去だよね。

プレイヤーは「誰かに傍にいてほしいと乞われたのは初めてだったから」の詳細を想像するはず。「余裕なく泥水啜ってた時期に雛菊に拾われたんか?」と。それが乙女ゲーのセオリーである。献身的な、絶対的な味方に仕上げるには、弱って余裕のないところを拾うべきなのだと乙女ゲーは教えてくれる。

「過去のことは過去のこと。もう終わった話だ。今の俺は雛菊のもの、だろ? ……違うか?」
「……ううん。違わない。淡雪は、わたしの淡雪だよ」
「だろ? おまえに拾われる前の話なんて気にしなくていい。俺も、もう忘れてる」

主導権のありかが分からないやり取りを繰り返しながら、淡雪は終盤まで自分の過去を雛菊にひたすら隠す。そして、そのついでにいとも簡単に「わたしの淡雪だよ」を引き出す。

 

2人の過去はこうだ。

10年前、凍玻璃でとても名誉ある職業である近侍(お偉いさんの護衛)だった淡雪に東五の家を守るよう命が下された。使用人として働くことが決まった矢先、東五の屋敷が火災が発生した。東五の当主はある派閥の中心的存在で、政敵に暗殺を企てられての事件だった。淡雪は駆けつけるも時すでに遅し。助けることができたのは雛菊だけだった。

「行っちゃうの? やだ。一緒に、そばに、いてくれないの?」

「……どこにも行かないよ。俺は、ずっと……傍にいる」

「誰かに、傍にいてほしいと乞われたのは、初めてだったから」の中身はこれ。

雛菊に裾を掴まれたことで、淡雪は雛菊に一生を捧げる覚悟を固めたのである。

 

 

「……おまえに拾われてから、俺の人生が始まったから。俺はそう思ってるし、そう思いたい」の意味がやっと繋がったよ。

淡雪は苦しい時期に雛菊に拾われたからこそ彼女に心酔しているわけではなく、自分の生きる理由ほしさに、自分の生きる意味になってもらおうと雛菊を利用していたという方が正しかった。

 

拾われてなかった!

 

これがに私に効きすぎた。淡雪と雛菊の出逢いの真相は、「おまえが、俺を求めてくれたから。……傍にいさせてもらおうと思ったんだ」だった。別に雛菊に拾われたわけじゃなかった。雛菊と出会ってから自分の人生が始まったと思いたい人が淡雪だった。

 

「利用していた」は私の言葉で、本人にそのつもりがあったわけではない。淡雪が雛菊へ注いだ愛情は本物だった。他人を傷つけて生きてきた自分の過去を隠したかったというのは確かにあっても、雛菊に辛い過去を思い出させることが嫌だったというのもまた本当だと思う。

「……おまえに初めて会ったとき。白い髪と、青みを帯びた藤色の瞳を見て、俺に似てるって思ったんだ。他人とは思えなかった、なんて……。貴族様相手に言うのも不敬だけどな。この子は俺みたいな目に遭わずに、凍玻璃のいいところだけを見て生きていけたらいいのにって。……嫌なものから守ってやりたいって、自然と思えたんだよ」

無償の愛の域。
「俺みたいな目に遭わせたくない」と尽くすのは、傍から見れば無償の愛。兄や姉が血の繋がった下の子に尽くすのとはわけが違う。この人事件の日に初めて雛菊に出会った他人ですからねー!
ともあれ、彼にそうさせた感情自体はとても美しいものに思える。

自立してる平民のお兄さん(16)が、自分に助けを求めてきた貴族の少女(8)のために生きようと決意し、立派な貴族の姫として育てようと慣れない勉強や家事を必死に頑張ってた。たぶんとても素敵な物語。

 

 

ここまでならちょっと変だけど優しいお兄さんに助けられて良かったね!で終わるが、ここから続くのが淡雪のヤバさ。

 

 

淡雪は「俺だけの姫」でいることを雛菊に求める。

雛菊が大人になるのを嫌がる。
当主として成長することは望んでるらしく、雛菊が自分の意志で選択すると好感度が上がる。淡雪を頼りすぎると上がらない。……ように見えた。だから「当主として立派になってくれることは喜ばしいが、俺の前ではいつまでも子供でいてほしい」が正解か?とか思ったけど、これは半分正解で半分間違いかも。「生きるも死ぬも全部捧げるし、これからの未来も、全部おまえに決めてほしい」の人だから、雛菊に従ってたいんだと思う。そのために、雛菊には立派な当主であってほしい。これもまた「俺だけの姫」思想の強さといえます。

当主としてではない雛菊に対しては、「……何が大人なんだか。歳を重ねたところで、俺がいないと何もできないままだろ、姫は」とろくでもない従者ムーブ。
小さい頃は歯も磨いてやって着替えだって手伝ってたとかいう話を今でもする。雛菊が言うには抱っこもしてもらってたらしい。それを「だから今も世話を焼かれてろ」で包む。雛菊もあっさり受け入れる。きっと8歳女児はそこまで幼くはなかった。

しかし、こんな淡雪も√中ずっと雛菊は俺だけの姫だもんヤダヤダ!ずっと俺がいないと何もできない幼い姫でいて!してたわけではなく、一応は雛菊離れをしようとしてた。

「なんでも、ひとりでやろうとするだろ。成人したんだから、って」と大人になる雛菊を引き留めようとしていた男が、依から雛菊との縁談をもちかけられたのに黙ってたことで主人の顔に泥を塗って「言いにくかった」「断ってほしい」と従者にしては過ぎた振る舞いをしてた男が、雛菊が依を「依さん」と呼ぶようになったことを嫌がっていた男が、「……お前も、もう立派な大人なんだから、こういう子供染みた真似はやめろ」「おまえも、もう大人なのに、あれこれうるさく言われて、嫌だったろ?」といきなり雛菊を大人として扱いだす。

無理するなとしか言いようがない。

こっちはわかってるんだよ。それが自分の欲望を抑えるための、自己暗示に近いものだとね。

 

「大人になんてならなくていい」は私欲のはず。

雛菊を自分の都合の良い存在でいてほしがるのは「利用」と呼んでもいいはず。

こっちは「うちの姫は俺がいないと駄目なんだ。見ればわかるだろ? 傍にいて、ずっと面倒を見てやらないと」を知ってる。

 

両親を亡くした直後ならまだしも、淡雪は自分の未来を自分で選択できる側だった。16歳だったし、生活の基盤も既にあった。大樹の近侍に戻るか、予定通り東五で働くかを選ばせてもらえた。大樹の近侍に戻る生活の方が、きっと安定もしたはず。出世街道だった。やむにやまれず縋ったのではない。正気でこの選択をしている。誰かの救いを必要とする弱者ではなかった。

 

「おまえに拾われた日から、俺にとっておまえの存在がすべてになった。俺の、俺だけの、姫」

 

なんかさ、あんなに「おまえがいないと生きていけない」を主張するから雛菊に真っ暗闇を照らされるような出会いをしたんなら執着するのもしゃーないかなって思ってたのに、選べる道はいくつもあるくせ自ら幼い姫の矛となり盾となり親となる道を選ぶ普通にヤバい人でかなり刺さった

 

辛い過去がある淡雪は雛菊の言葉で救われるよね……そりゃ一生傍にいることを誓うはずだわ……泣ける……😭ってならんわ。

士官学校に入る前の淡雪の人生は、さらっと語られたくらいだからよくわからない。幼い頃に両親を亡くし、残された家と僅かな金と凍玻璃の福祉に頼って生きた。人とは違う珍しい容姿で、気味悪がられることがあった。親のいないそんな子供はいなくてもいい存在として扱われた。そんな自分が初めて誰かに「傍にいてほしい」と求められた。一生を捧げる覚悟が生まれた。という淡雪の人生。

理屈としては理解できる。でも「人生の重大な決断をしてしまえるほどの出来事か?」が消えない。だって、きっと雛菊は「淡雪だから」助けを求めたわけではない。「そこにいたのが淡雪だったから」助けを求めた。

ここは決して描写不足というわけではなくて、淡雪だけの特殊な感情だから自分に覚えのある感情で置き換えられない。共感できない。
「近侍になる栄誉を手放してただの従者になるなんて頭がおかしい」と依が言ってたように、本当に、相当な変わり者。

誰かのたった一言に胸をうたれ、心酔したことなんてない。
8歳も年下の幼い少女を生きる意味にした経験なんて、これまでも、これからも、ない。

 

淡雪は「おまえに拾われた」と繰り返してたのに、拾われてなかった。
淡雪が望んだから、雛菊は凍玻璃が平和な街だと疑うことなく育った。

淡雪が望まなかったから、雛菊の容姿を異端だと謗る声は彼女の耳に届かなかった。

淡雪が非情な人間だったら。
淡雪が雛菊に同情しなければ。

「そばにいてくれないの?」と雛菊に伸ばされた手を振り払える人間だったら。

火事で家柄以外の全てを失った雛菊を生かしてたのは淡雪。

淡雪が障害を殺してたから、雛菊は今も生きてる。

「おまえがいないと生きていけないよ」は、「おまえのために生きている」だった。

 

そんな淡雪に雛菊が絡め取られてるのがよかった……………♡♡♡

なにも知らないまま、お世話されてたんだ……………………♡♡♡♡♡

 

わけがわからないお兄さんに世間知らずな幼女が執着されて、しっかり守られて、元気に成長してるのが面白かった。幼いから刷り込みのように淡雪に懐いてしまったのもたまらない。そんなことに気付かず「淡雪はわたしのだもん」と言わされてる。言えるように育てられた。

終盤、結婚して淡雪といられなくなるなら結婚したくないと雛菊が仲間にだけ伝えた時、「俺はおまえがいないと駄目だよ」の回想が入る。雛菊を縛ることに大成功。めちゃくちゃ効いてる。淡雪の育て方、自分から離れられないようにする大正解をキメてた。

 

「……仕方ないなあ、淡雪は。わたしがいないとだめなんだから」

………………😃

「……おまえがいないと生きていけないよ、俺は」

………………………………😃

「淡雪だって、わたしがいないとだめでしょ?」
「確かに、俺はおまえがいないと駄目だよ」

………………………………………………😃

「忘れないでくれ、雛菊。俺は、おまえがいないと生きていけないよ」

………………………………………………………………😃

「おまえの従者って立場だけは、もう手放せない。……捨てられたら、生きていけないんだ」

隷属欲と愛重めの従者という乙女ゲーオタクが好きそう♡属性で、主人が絶対の主従関係で、こんな生殺与奪の権の絡まりが発生してるなんて想像できないだろ!

 

信仰の対象を必要とする人がこの世に存在する理由、また乙女ゲーからふわっと感じられたね。

 

奇跡の存在・淡雪

私が何に萌えてるのかあんまわからん人もいると思いますが、私の大好きな乙女ゲー人生カプの片割れと淡雪の在り方が似ていてかなり興奮してるというわけです。
自分語り、乙女ゲー人生カプ語りをすると、私は自分のために誰かを存在意義にする人間がヘキです。その人に必要とされることで自分を保てる人間がヘキです。
命をかけて仕える主に「あなたを守りたい。いえ、お守りすることで、自分の意味を感じたいんです。捨てられない、必要なものだって……。生きている意味があるって、あなたが実感させてくれる」と、自分の存在意義のためにあなたを守ってると伝える女が人生カプの片割れです。

命をかけて仕える主に「神子であるお前を守るのが私の意味。だからそれを否定しないでほしい」と、道具として必要としてくれることが自分の存在意義になると伝える男が人生カプの片割れです。

自分の存在意義を、自分の命を懸けてでも確かめたがる脆い心が大好きです。

そこまでしないと自分の存在意義を確かめられない脆い心が大好きです。

その脆い心とは反比例した戦闘力が大好きです。


淡雪は私の人生カプの男女の良いところを兼ね備えた奇跡の存在。

しかも、全てを失いかけた少女に付け込み、自分がいないと何もできなくてもいいと言い切る愛情を注いで育てたことが加わり、私にとってはハッピーセット。自分の存在意義を10年かけて育てた男なんて初めてだなあ。乙女ゲー界に生まれてくれて嬉しい。心から……。

 

池袋駅の合言葉ボイス、正直ドン引きだったよ。髪を結うのも靴を履かせるのも全部俺が世話してやるから勝手に1人でやろうとするなとか言ってたよ。「勝手に」だよ。心酔先を自分で決めてた男の発言だと知って、震えたね。泡沫のユークロニアは淡雪のためのプリンセスメーカーだったのです。

フォロワー。見たくもないものを見せて、ごめん。

 

「8歳から世話してる18歳の姫を26歳になった自分が抱き潰してるなんて普通に考えておかしいよ。幼い姫の顔が浮かばんのか?」とキモ敗北しなかった理由

淡雪と雛菊、BESTエンドで肌色状態で出てきた。
サービス的に、ノルマ的にさらっと「しました」事実だけ出してこられる匂わせシーンにオゲ〜🤮するタイプだから、初見では若干怯んだ。
「夜は可愛がってやっただろ?」的なSho-Comi風イキりセリフを吐かれるのも苦しい。
行為自体はキツいし無理だけど、淡雪の場合は雛菊に全てを捧げる従者として生きてきたのに恋心を自分に許すと性欲にのまれるただの男になってて、これが雛菊を自分の生きる意味として育ててたいびつなメンタリティとの相乗効果というか、自分可愛さを平気で持ってる人だということが強調されるようでなんか許せた。


「おまえが望まないなら俺から求めたりはしないって約束する」とか言ったくせ、ばっちり自分の欲望満たしてるじゃんか、みたいな。
タガが外れた従者が男見せてくるの萌え!!!!!は1ミリもなくて、「結局ただの男だったな」みたいな……。

雛菊が大人になることを望まないくせに自分の元でならOKって、幼女を自分のために生きる姫として育てた男は自分の欲望もちゃんと守るんだなって、そういうのから淡雪のエゴを感じられてよかった。早くに恋心を自覚した雛菊にアプローチされてもすぐに飛びつかなかったところは賞賛します。

 

淡雪の特典類見たけど、どれも高確率で夜に繋げるからメス猫臭半端なかったよ。「続きは夜にな……」みたいなの、やめた方いい。「おまえが望まないなら俺から求めたりはしないって約束する」はまじでなんだったの? 雛菊が嫌がるならやめるけどそうでないならガンガン責めるぞ!ってことだったらしいです。ポイント下がったね。

凍玻璃の綺麗なものだけを見て、綺麗なものだけを信じて生きてほしいとあれだけ願って尽くしてきた主人を、いわくつきの家で結婚もできずに隠れて従者を情夫として扱う女に堕とすなんて……。おかしい主従に見られることだろう。
でも……従者が望んでくれたから従者の願いを自分の願いごと叶える主人ってめっちゃ良いと思います……♡♡♡ この恋で東五が途絶えてもしょうがないって愛する姫が言うてるし………♡♡♡♡♡
大樹が身分差なんとかしたいな〜つうてたので、いずれはなんとかなるのかも。私はどっちでもいいで〜す。高貴な存在であるべき主人を異端にした決定打が従者の恋心って、身分差恋愛の尖った切り口だ。雛菊のために生きてるけど、雛菊のためだけが理由じゃないからね。

淡雪の恋心は「俺のために生きてくれ」でしかない。


セックスよりも保護者が庇護対象を抱き潰す展開の方が私にとってはキモ敗北率が高い恐ろしいシチュエーション。まあこれも無事に突破。私がこれまでキモさに慄いてきた乙女ゲー攻略対象たちと淡雪は何が違ったのかを考えました。

 

①淡雪は雛菊に向ける保護者としての愛と異性としての愛の境界線が曖昧
てかそもそもそんな境界線がない

雛菊への愛の一括りになってて、区別してないから。
私は保護者としての愛が異性としての愛の下敷きにされると怒り狂う質なもんで、家族愛が異性愛に変化するのをかなり嫌う。しかし、淡雪はそういう風に描かれてなかったから嫌悪感が薄れた。
淡雪にとって雛菊を保護者として愛してたことは過去ではなくて、恋愛関係になった今もそう。

「子供を恋愛対象にしてはいけない」ではなく、「子供であれ大人であれ高貴な雛菊を恋愛対象にしてはいけない」で己を律していたのが淡雪である。
保護者と恋人では互いの同意を得てできることが変わるだけで、きっと大きな違いはない。

今まで、ほとんど親代わりみたいな気持ちでおまえの世話を焼いてきた。俺は──……。ただの、姫の持ち物のひとつに過ぎないのに。そういう意味で好きになったら、……おかしいだろ。……そんなの。

 

(……俺は、役割を全うする、従者という道具。『もの』でいれば、雛菊の傍にいられる。『もの』でなければ……。いつまでも、傍には……いられないだろ……)

姫の傍にいられるのなら『もの』として傍にいることしかできない身分も耐えられた。それなのに依と婚約されたら『もの』としても傍にいられるかわからない。という焦りと不安がきっと淡雪のネジを吹っ飛ばした。

√中ずっとうじうじ「俺はおまえの親代わりであって恋愛対象としては見られない(見てやれない)」のスタンスだったらさすがにキモかったね。でも淡雪はキモくなかったよ。彼は「平民と貴族の恋愛は禁忌」に縛られて及び腰になってただけで、親のような気持ちで育ててきた姫に恋情など……って葛藤はほぼなかったから。少しはあったらしいけど、さらっと触れる程度で葛藤のうちにも入らない。
ほぼなかったことが嫌悪感を上手くなくしてくれた。結局吹っ切れるなら葛藤って意味ないし。初めからそんな考えがないなら、抵抗がないのも当たり前。納得というより「"普通"は淡雪に通用しないし……」という諦めを理由にしてるだけかもしれない。

でもまあ、キモ!!!!!!センサーが反応しなかった私の勝ち。

 

Q.8歳から世話してる18歳の姫を、26歳になった自分が抱き潰してるなんて普通に考えておかしいよ。幼い姫の顔が浮かばんのか?

A.おかしいけど、本人にその倫理観が存在しないなら仕方ない。

 

②16歳という子供ではない年齢で、自分を求めてくれた初対面の8歳女児に心酔する時点で相当変わってる人

こちらには共感できない感情で人生を決める人だから、そういうもんなんだろうな。私は淡雪じゃないからわからないよ。

 

Q.8歳から世話してる18歳の姫を、26歳になった自分が抱き潰してるなんて普通に考えておかしいよ。幼い姫の顔が浮かばんのか?

A.おかしいけど、本人が元から変わってる人だから仕方ない。

 

 

淡雪の気持ちになってみてくださいよ

雛菊は淡雪の一部。
雛菊は淡雪が自分のために愛を注いだ大事な大事な彼だけの姫。
そんな雛菊が他の男と恋する様子なんて、完璧な執着を見せつけられた私は楽しく受け入れられるか怪しい。雛菊に淡雪の責任をとらせようや……今更アラサーを放り出すのは罪だろうが……

乙女ゲーであるにもかかわらず、雛菊を複数の攻略対象と恋する可能性がある乙女ゲー主人公として見れなくなってしまった。

 

雛菊に人形の服を繕って欲しいと頼まれて自分の着物で練習して作ってあげてたとか、雛菊がリクエストした料理が実際に作られるまで遅いのは練習してたからとか、淡雪のヤバエピソードの影には愛情がたくさんある。元々あまり器用な方ではなく努力で全て補ってきたことが出会って10年、遂に雛菊にバレてしまった。完璧な従者じゃなければ頼ってもらえなくなると思ったからだというのもいじらしさを加速させる。
また、淡雪は士官学校時代、依の悪口を言ったせいでボコられる平民の間に入って逆に依をボコった事件を「常識に疎かった」と恥じている。
だからこそ、自分に常識がないことで雛菊に恥をかかせないよう、雛菊に常識を教えられる自分であろうと必死に勉強したんでしょ。

 

雛菊がどこぞの男と婚約して、鳥の巣症候群になる淡雪なんて見てられない。
他√ではギャグとして消化されるのだろうが、淡雪はそんなネタになるような気持ちで雛菊を育ててないんだわ。公式は依√以外で過保護従者ギャグをやるつもりなんじゃないですか?そういうの、面白くないからね。

「俺は死ぬまでおまえの従者だ。生きるも死ぬも、おまえが好きに決めてくれ。……必要なくなったら捨ててくれてもいいんだ」と泣きそうな声で雛菊に言ってた淡雪の声を忘れたのか?

 

依√の話をする。雛菊は乙女ゲー主人公だから、もちろん依とも恋仲になる。

依BEST、あの人性格悪いしさ〜性根も悪いし〜いいところの方が少ないんだけど……でも、やっぱり好きだから…… と雛菊に依惚気を聞かされた淡雪の「……俺は、納得してないからな」の声がクソ怖かった。斉藤壮馬さんの声でマイルドにしてもあの怖さ。あんな怖い淡雪の声を聴いても呑気に 「それでも好き……悔しいけど……」的文脈モノローグを差し込んでくる依惚れ雛菊のなんもわかってなさが、悲しかった。

 

もっと最悪なのが依BAD。

「おまえを傷つけた男を選ぶくらいなら、俺にすればいい」は淡雪の心から血が出ていますよ。

 

「……俺がついてる。おまえを、ひとりにはしない……!」

↑淡雪√で雛菊(18)に言ってほしかった言葉ナンバーワン

淡雪……その言葉をよりにもよってなんでここで……この依BADで……

俺がついてるから……おまえをひとりにはしないから……で拾ったかつての少女に、成長後同じ言葉をかける回収をしてほしかったわ!

今も昔も、自分の意志で雛菊をひとりにしない選択をするのだと、淡雪√でやってほしかったわ……

 

「けど、俺はずるいから。おまえが迷ってるなら、そこに付け込むよ」

雛菊との出会いもそうだったもんね。「淡雪ってそんな人間だよね」を再確認できた。こうなるしかないと思う。依BADに対する「淡雪はそんなんじゃない!」なんて感情はあーしにはゼロです。

 

 

おまえの隣にいる権利を、誰にも渡したくない。……だって、俺はおまえのものだ。生きるも死ぬも全部捧げるし、これからの未来も、全部おまえに決めてほしい。なのに、何で手放されなきゃならないんだ? ずっと、傍にいさせてくれ。……じゃないと、おかしいだろ……。

子供の駄々すぎる~。しかしまあ、泡沫のユークロニアで淡雪が一番言いたいことってこれなのかも~。俺がおまえの傍にいられないのはおかしい。俺が一番おまえの傍にいたいのに。ほんとだよ。

依√中、ずっと淡雪に申し訳なかった。依と雛菊の恋に集中できなかった。私のとってはそれでいいんだと思う。私のユークロはまだまだ続きます。でも、雛菊を他の男にはやりません。雛菊が他の男と結ばれることに心を揺らさない。それが、発売前から淡雪にすべてを託していた私が見せられる精一杯の誠意です。

「うちの姫は俺がいないと駄目なんだ。見ればわかるだろ? 傍にいて、ずっと面倒を見てやらないと」

雛菊が乙女ゲー主人公であることこそが、俺がいないと駄目な雛菊はこの世のどこにもいないことの証明となる。

乙女ゲー界、淡雪が生まれるには酷な世界だったのかもしれない……。

呪え。淡雪。「おまえがいないと生きていけないよ、俺は」で雛菊を呪え。

雛菊が乙女ゲー主人公として生まれてしまったのはどうしようもない。

攻略制限のない強制序盤攻略男として、その呪いを武器に戦え。前座男にはその権利がある。攻略制限男への興味を刈り取れ。前座男にはそれを成し遂げるチャンスがある。

呪え。早ければ1周目か2周目で自分の元へやってくる、すべてのプレイヤー雛菊を。